合気道の技は、相手に触れるやいなや一瞬のうちに制することができると言われています。合気道は相手と優劣を競うことをせずに、互いの習熟度に合わせて技を繰り返して稽古し、心身の錬成を図ることを目的とした武道です。
植芝盛平(うえしばもりへい)翁が厳しい武術の修行と精神修養を経て創始し、1942年に「合気道」と名付けたこの武道は、現在世界約140の国と地域で広まり、来日して合気道の稽古に励む外国人修業者も多くいます。
合気道の創始者・植芝盛平翁が生まれ育った和歌山県田辺市では2020年に「植芝盛平記念館」を開館し、植芝盛平翁の生涯や合気道の沿革を紹介しています。合気道の基本となる「構え・歩法」「座法」「体さばき」を映像で見ながら体験できるコーナーもあります。
「植芝盛平記念館」と同じ建物内には「田辺市立武道館」があり、ここでは実際に道着を身につけて合気道を体験できます。指導してくれるのは植芝盛平翁の弟子であり、合気道田辺道場長である五味田聖二氏の息子・潤一氏。合気道五段であり、指導員としての資格もある潤一氏が、初心者から経験者までレベルに合わせた内容で、わかりやすく教えてくれます。
礼の作法や投げ技、固め技、武器技、受け身など、合気道の基本動作の体験のほか、演武の披露も行われます。合気道の体験は日本語だけでなく、英語やフランス語でも対応可能です。
和歌山県南部にある「熊野三山」は三社一寺(熊野速玉大社、熊野那智大社、熊野本宮大社、那智山青岸渡寺)の総称で、この三山を巡れば、過去、現在、未来の安寧を得ると言われています。田辺市にある「熊野本宮大社」は熊野詣の最初の場所で、社殿を目指し158段の石段を上っていきます。植芝盛平翁も心の修行としてこの地に訪れています。
「熊野本宮大社」から10分ほど歩いた大斎原(おおゆのはら)には、高さ約34m、幅約42mの大鳥居があります。ここは熊野川と音無川、岩田川の合流点の中洲に位置し、かつて「熊野本宮大社」が鎮座していた場所。1889年の大水害で社殿の一部が流出し、「熊野本宮大社」は現在の場所に遷座されました。
熊野三山の参詣道である熊野古道は、整備されているところもあるのでルートによっては気軽に楽しめます。「発心門王子(ほっしんもんおうじ)」からスタートして、お地蔵さんの「道休禅門地蔵」を過ぎ、大鳥居と熊野川が見渡せる展望台に立ち寄って、「熊野本宮大社」を目指す約3時間の中辺路ルートなどがおすすめです。
熊野エリアの名物郷土料理「めはり寿司」は、俵型のおにぎりを高菜の葉でくるんだもの。山仕事などの合間に簡単に食べられるお弁当として広まったそうで、名前の由来は「食べるときに目を張るように口を開ける」や「目を見張るほどに美味しい」など様々な説があります。店によって味付けは異なり、「熊野本宮大社」近くにある「茶房 珍重庵」ほかで食べられます。
また、日本の国民食の一つとも言える梅干しですが、田辺市と隣町のみなべ町とで梅の生産量日本一を誇っていて、当地域の梅の生産方法は地域環境を生かした伝統的な農業、農法として世界農業遺産に認定されています。「紀州梅の里 なかた」ではたくさんの梅製品を販売していて、梅干しの試食や梅酒の試飲ができ、希望すれば工場見学もできます。昔から保存食として親しまれている梅干しの美味しさを、再認識できます。
熊野エリアの玄関口である田辺市では、合気道体験や精神世界の基礎となる熊野の文化・歴史を知ることができ、合気道の真髄に深く触れられる武道ツーリズムが楽しめます。