合気道と熊野古道
唯一無二の資源でまちに変化を
2022年度 スポーツツーリズム
コンテンツ創出事業モデル事業者
株式会社TABIKYO JAPAN
羽田 明史 氏
合気道
民間企業
和歌山
屋内
英語OK
- COMPANY DATA
- ●本社所在地:
京都府京都市左京区下鴨宮崎町119-1 - ●創業年 2019年
- ●事業内容:地域ブランディング事業 、国内ツアー旅行手配事業、体験デザイン・ガイド事業等
- 2022年度のスポーツツーリズムコンテンツ創出事業に採択された取組事業の内容は?
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まず当社で行なっている事業は主に3つあり、1つ目は海外の富裕層向けに文化体験や旅行手配を通して地域を知るためのより一歩踏み込んだ旅を提供しています。2つ目は地域をプロデュースし、観光手法を用いて地域創生を後押しすること。そして3つ目は現場ガイドに関わる事業です。
今回の取組事業では、熊野古道という唯一無二の観光資源がある田辺市で、観光と合わせて合気道を楽しめるようツーリズム化しました。具体的には、合気道体験と熊野古道が両方体験できる2泊3日のセットプランです。こちらは合気道に触れたことのないライト層向けのプランで、「日本の精神性」という大きな括りで興味を持っていらっしゃる方たちに喜んでいただけるものになっています。
- スポーツツーリズムコンテンツ創出事業への応募のきっかけは?
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当社は京都を拠点としており、以前から熊野エリアにもお客様をお連れしていたこともあり、田辺市と繋がりを持っていました。エリアへ何度か通ううちに、「田辺市は合気道創始者である植芝盛平氏の生誕地なのに、愛好家以外にはあまり知られていない」という声を地元の人たちから聞いていました。
僕らのチームの中に、富裕層の観光ガイドをしながら合気道を嗜むフランス人の仲間がいるのですが、彼がアドバイザーとして入れば合気道をツーリズム化できるのではと思い、スポーツツーリズムコンテンツ創出事業に応募しました。熊野古道のある田辺市とは以前から繋がりがありましたし、田辺市が持つ合気道という文脈、アドバイザーに最適な人材等、これらの要素があれば田辺市で武道ツーリズム化を推進できると考え、実行しました。
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事業をスタートする際に
苦労した点は? -
まずは価格設定です。従来、伝統あるものに価格を付けることはタブーとされてきました。とはいえ、ボランティアだと持続可能にならず、消えていってしまう可能性もあります。このタブーに踏み込めたのは、田辺市の外部から来た私たちだからできたことでした。私たちは元々外国人富裕層に向けたコンテンツ提供をしていたので、彼らの価格感は知っていましたし、説得力を持って伝えられました。それができたのも、先に述べた外国人アドバイザーがいたからで取組を進めるにあたってそれはとても重要なことでした。価格についてはドルやユーロで計算し、アドバイザーの彼から適正だと説明することで、関係各所にも納得していただけました。
また、合気道の先生や地元の事業者、市の関係者、合気道関係者、映像制作の事業者など、関わる全ての人に対しては、直接挨拶や事業説明を行うようにしました。新しい取組、ましてや伝統を扱う事業は、言葉の受け取り方によって誤解が生じてしまい、場合によっては事業が中止になってしまうリスクがあると想定していたためです。伝統という繊細なコンテンツを取り扱うので、細心の注意を払いながら進めていました。
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実際に事業に取り組んでみて
良かった点や苦労した点は? -
外部の人間である私たちだったからこそ、この事業を世の中に届けるためにはどうしたら良いか、来てもらうためには何が適正なのかをしがらみに囚われず、シンプルに考えられたところが良かった点だと思います。その中で気を付けたことが3つあります。1つ目は合気道関係者から許諾をいただくために、パンフレットや映像などは全て事前チェックをお願いしました。2つ目は映像など世に出すものは、プロでなければできない高いクオリティで作り、関係者の期待を少しでも上回ることを大事にしました。3つ目はコミュニケーションの細かさや、適切なタイミングで連絡することを心がけました。
これらを積み重ねて事業を行なった結果が実を結び、既にお客様が来始めています。外国からだけでなく、日本人のお客様の利用もありました。結果が出るまでに10年20年かかってもおかしくない事業だと思っていたので、合気道の先生はじめ、地元の事業者や市の関係者が喜んでくれています。
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今後の取組について
考えていることは? -
合気道を好きな方に、合気道のツーリズムとして田辺市に来てもらえるように整備していきたいです。そのために、今期は合気道や武道のコアなファンが喜ぶ1段階踏み込んだプランも作りました。合気道単体を楽しむもので、地元の合気道の先生と繋がって、より合気道を知っていただけるプランです。
実際、田辺市内を外国人が歩いていたら地元の人が武道館まで連れていってくれるという、行動の変化が起きているんですね。ツーリズムを通して訪れた方に田辺市のことをよく知ってもらい、体験に感動する人が増えれば、地元の人もプライドを持てますし、田辺市のことをもっと好きになる。そうすれば、都会に出ていった若い人たちも帰って来るようになり、田辺市が一層魅力的になっていく。こうした「好循環の川」になるための最初の一雫になれるように取組んでいます。
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検討している事業者への
アドバイスはありますか? -
武道や伝統を既に扱っている事業者と連携し、相談したりアドバイスをもらったりするといいと思います。自分たちの考え方だけでは想定できないこともあるはずなので、武道ツーリズムのネットワークを構築し、武道ツーリズムを通して広がる未来を地元の事業所や関係者に向けて伝えてあげることが大切なのではないでしょうか。