事業拡大に向けて
地域・道場を巻き込んでいく
金沢文化スポーツコミッション
里見 浩次郎 氏
武道
外郭団体
石川
地域・道場の連携
- DATA
- ●本社所在地:
石川県金沢市広坂1-1-1 (金沢市役所第一本庁舎2F) - ●創業年 2018年
- ●事業内容:文化・スポーツ大会の誘致(交流人口の拡大)、参加者への金沢らしいおもてなし(伝統文化体験等)
金沢文化スポーツコミッションの統括マネージャーとして、立ち上げから携わってこられた里見浩次郎氏。2019年より事業を開始した武道ツーリズムはコロナ禍で一時休止していたものの、2022年から再スタート。再開されるにあたってどのような方法で事業を進めてこられたのか、Q&Aでご紹介していきます。
- 2022年、コロナ禍で一時休止していた武道ツーリズムに再び取り組まれた経緯とその内容は?
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金沢文化スポーツコミッションでは、2019年に弓道での武道ツーリズムをスタートさせました。ですが、翌年からコロナ禍となり、活動できずにいました。コロナの状況が少しずつ落ち着いてきた2022年頃、スポーツ庁で推進している武道ツーリズムを金沢としても少しずつ進めていこうということになりました。
しかし、いきなり動き出すのではなく、まずは金沢市内にどんな武道教室があるのか、というところからリサーチしていきました。具体的には、空手や合気道、柔道、弓道など計7つの武道をピックアップし、各連盟や協会の方にお会いして道場や教室の情報を伺っていきました。それだけでなく、インターネットでも情報を収集しました。武道ツーリズムに繋げるには初心者向けの教室を開いていることを必須の条件と考え、リストアップしたあとは各道場一軒一軒に連絡を取り、「週何回教室を開いているか」「初心者の受け入れ体制はどのようにしていて、どの時間帯で受け入れているか」などを聞いていきました。そして、初心者の受け入れ体制があり、武道ツーリズムに賛同いただいた道場および教室を一覧にし、当組織のホームページに掲載しました。これが武道ツーリズム再スタートの第一歩といった感じです。
- 道場や教室へ働きかけるにあたり、心がけていたことは?
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自分が行ける道場には直接伺い、道場主の方とお話することを心がけていました。これはやって良かったと感じています。
道場や教室といっても、運営状況はさまざまです。自分の道場を構えて教えている方もいますが、武道だけで生計を立てるのは難しい状況にあります。要は、昼間は別の仕事をしていて、週に数回、夜に市内の体育館や公民館で教室を開いている方です。むしろ、そうしたケースがほとんどでした。そういう方は、ビジネス面で武道ツーリズムに興味を持つというよりは、武道を広めたいという熱意があり、国外から来た方にもぜひ武道の良さを伝えたいとおっしゃる方が多いんです。そうした声を聞くことは活動の励みになりましたし、武道ツーリズムに取り組むモチベーションにも繋がりました。
また、道場主の方々と顔見知りになることで、例えば今後、道場主催で大会を開く際には、スポーツコミッションとして、大会誘致に協力することができます。地道な活動だとしても、お互いに信頼関係を作り、ネットワークを築いていくことが、今後の財産になっていくんですね。
- 事業に取り組んでみて苦労した点は?
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ビジネス感覚を道場主の方々に持っていただくことでした。体験に来られた方に、武道の基本を教えることは大切ですが、立ち方やしぐさ、しきたりといった基本的なことだけを教えても、その魅力をなかなか伝えることができません。柔道や空手だったら、かっこいい技や型をやってみたいと思うはずですし、弓道だったら実際に矢を射ってみたくなるはずです。体験者を喜ばせないとビジネスにはならないですし、ツーリズムに繋げていくこともできません。体験では費用をもらわないという道場主の方も多かったのですが、そうではなく、相手を喜ばせて謝礼をもらい、長く続けていくためにもビジネスにすることを考えて欲しいと、道場を回りながら何度も説明しました。
これは、私自身が金沢だけでなく、国内のさまざまな武道体験をしてみて感じたことがあります。例えば、私が武道の素晴らしさをより実感したのは合気道体験です。腕捻りという技は、捻る角度によっていとも簡単に相手を投げ飛ばすことができます。そうした道理にかなった技を見て武道の奥深さに感動しました。外国の方に自分でもできる護身術を伝えたら、きっと喜ばれるはずです。金沢の伝統文化やまちの魅力とともにぜひ武道に親しんでいただけたらという想いで、道場主の皆さんにお話しています。
- 事業に取り組んでみたあとの道場主の皆さんの反応は?
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「また何かあったら紹介して欲しい」というお声をいただくことが度々あります。事業を再スタートした2022年は、まだコロナ禍で自粛されていた道場や教室も多い状況でした。ですが、2023年頃から再開されたところが多かったんです。道場や教室の方から、「あのとき、武道ツーリズムを熱心に紹介してくれてありがとう」とか「あれから50人も体験に来たよ」という声をいただくこともあり、うれしく感じています。
私たち自身は非営利団体なので、実際やっていることは、あくまで道場や教室のサポートをすることです。私たちがいなくても、道場や教室がビジネスという観点から自走していくことが目的なので、その一歩となる反応をいただけたのかなと思っています。
- 今後、どんなことに挑戦していきたいですか?
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今の課題は武道ツーリズムに繋げるにあたり、飛び込みで体験に来られた方に対してすぐに受け入れができない道場が多いこと。とても歯がゆいく感じていることでして、今後ビジネスとして成り立っていく道場が増え、飛び込みの方も受け入れられる体制を作っていけたらと思っています。
あとは、今後さらに金沢の武道ツーリズムが拡大し、私たちの活動事例を広めていくことで、ほかの地域でも武道ツーリズムを立ち上げたいと思っていただけたらうれしいですね。