廻しを締めた大きな身体の力士たちが至近距離からぶつかり合い、力だけでなく様々な技を駆使して競う相撲は、日本を代表する伝統武道です。
相撲の歴史は1500年以上と古く、力比べや取っ組み合いから変遷していきました。世界各地にも相撲に似たスポーツはありますが、日本では歴史書である『古事記』や『日本書紀』に登場する、力比べや天皇が観覧する天覧勝負の伝説が起源としてあげられます。そして現在のように頭にまげを結った力士が土俵に上がり、1対1で取り組みをするようになったのは江戸時代(1603〜1868年)からと言われています。奇数月の年に6回、各15日間、東京や大阪、愛知、福岡で力士たちによる大相撲が行われ、その迫力ある取り組みは見ている人たちを圧倒します。
東京都内の下町の雰囲気が残る墨田エリア。大相撲の開催場所「両国国技館」があることから、このエリアには相撲部屋が数多くあります。力士になるには必ずどこかの相撲部屋に属していなければならず、長である親方を中心に、力士たちは集団生活をして稽古に励んでいきます。
力士たちの稽古は、朝早くから行うのが基本。特別プログラムでは、普段、立ち入ることのできない相撲部屋を訪れ、稽古の様子を見学できます。見学の内容は各相撲部屋によって変わりますが、稽古中は力士たちの集中を邪魔しないように私語を控えめにするなど配慮が必要です。
稽古はまず基本運動である四股(左右の脚を高く持ち上げて下ろす)や股割り(両脚を180度近くまで広げて胸を地面につける)、すり足などから始めます。これは足腰を鍛え上げ、怪我をしないようにするためです。力士たちが攻め手と受け手に分かれて、土俵の外まで相手を押し出す「ぶつかり稽古」は特に迫力があります。親方はその稽古の様子を見ながら的確に指導。見学している側も自然と身が引き締まります。
稽古の後は、食事の時間。力士たちが食べる料理は「ちゃんこ」と呼ばれていて、必ずと言っていいほど作られているのが鍋料理です。肉や野菜、魚介類などとにかく具だくさんで、その日によって味付けや食材は変わります。親方や力士たちと一緒に食事ができるのもこのプログラムの魅力。激しい稽古を終え、リラックスして食事を楽しむ力士たちとの時間を共有できます。
墨田エリアには相撲文化に触れられるスポットも点在。「両国国技館」へと続く国技館通りの歩道では、様々なポーズの力士像や歴代の横綱の手形を見ることができ、撮影スポットになっています。その近くの寺院「回向院(えこういん)」には歴代の力士等を祀る力塚の碑もあります。
「両国国技館」から徒歩数分のところには、池を囲むように作られた江戸時代の日本庭園「旧安田庭園」があります。静かで緑が多く、自然の風景が堪能できる趣のある場所です。北側には「刀剣博物館」が隣接。日本刀を保存・公開し、日本刀の文化を伝えている施設で、国宝の刀をはじめ、刀装具や甲胃、古伝書などを展示しています。
また、墨田エリアを流れる隅田川の遊覧船観光もおすすめです。現代的な街並みと共に、下町の風景や江戸の名残り感じる歴史スポットを水上から眺めることができます。
相撲発祥の地とされている島根県出雲エリア。弁天島と呼ばれる大きな岩が白砂に佇む稲佐の浜は、日本最古の書物『古事記』の国譲り神話に登場する場所で、この稲佐の浜(伊耶佐の小浜)でタケミナカタとタケミカヅチが力比べを行なったと記録されています。
ここから東へ約20分歩くと、出雲大社に着きます。縁結びの神様として有名な神社で、『古事記』にも記されているほど歴史は古く神聖な場所。現在の本殿は1744年に建てられたもので、国宝に指定されています。
本殿の西には神楽殿が位置し、正面の注連縄は全長13.6m、重さ5.2tもあり日本最大級。一般的な神社とは反対に、出雲大社では向かって左方を上位、右方を下位とする習わしがあり、左右が逆に張られています。
境内にある摂社・野見宿禰(のみのすくね)神社では、『日本書紀』に登場する相撲の神様が祀られています。両脇には相撲の廻し姿のウサギが鎮座しているので、お見逃しなく。
せっかく出雲エリアに訪れたのなら、もう少し足を伸ばして「菅谷たたら山内」へ。たたらとは砂鉄と木炭を燃やして鉄を作る日本古来の製鉄法で、たたら職人達が住んでいた集落(山内)が、当時のままの姿で残されています。約170年間稼働していた製鉄炉がある建屋の高殿は必見です。
また、「たたら鍛冶工房」では、実際鍛治体験をすることができ、気軽にできるペーパーナイフや本格的な和銅小刀づくり体験が楽しめます。
そして、このエリアの名物といえば出雲そばです。殻の付いたままそばの実を挽いて作られたそばは、色が濃く、香り豊かで栄養価が高いのが特徴。冷たい「割子そば」と温かい「釜揚げそば」があり、自分でつゆをかけて好みの濃さにして食べます。約220年続いている出雲そばの名店「荒木屋」をはじめ、出雲大社周辺だけでもそば処はたくさんあります。
もう一つ、小豆を甘く煮詰めたぜんざいも名物で、出雲が発祥とされています。旧暦10月の神在祭で、全国から集まった八百万の神様に振る舞われた“神在餅(じんざいもち)”がなまって、“ぜんざい”になったと伝わっています。ぜんざいを提供する店は多くあり、「おつまみ研究所大社門前ラボ 日本ぜんざい学会壱号店」ではお椀からはみ出るほど大きな焼き餅で盛り付けたぜんざいなど常時計6種類のぜんざいが食べられます。